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2022.03.25 UP
透析患者様にとってシャントは命綱 ~優しい透析治療を目指して~

こんにちは!人工透析室の臨床工学技士の柴田です。
 私たちは透析患者様のシャントを優しく大切に扱うことを心掛けています。
透析患者様は透析ごとにシャント(=透析を行うのに必要な血液を確保するために動脈と静脈をつなぎ合わせて作った血管のこと)に17G~19Gの太い針(採血などで使用する針は22G~23G(数値が小さい方が太く、数値が大きい方が細い))を刺します。毎週3回、1回に2本の針を刺し「①血管から血液を取る→②人工腎臓装置で血液をきれいにする→③血液を身体に返す」の工程を繰り返し行っています。
 「透析患者様にとってシャントは命綱」と言う言葉を耳にしたことがあります。それはもしシャントがダメになってしまったら透析治療に影響を及ぼす可能性が高く、生命の危険に直結する原因になってしまうからだと思います。ですから私たちは「患者様の今あるこのシャントを大切にして長持ちしていただきたい」という想いから、シャントを大事にする=シャントを優しく大切に扱う=【優しい透析治療を実施しよう!】と目標を掲げました。

 私たちはこの血管に針を刺す行為のことを=穿刺(せんし)と呼んでいます。患者様にアンケートを実施したところ、透析患者様のストレスの多くの原因は穿刺時の痛みや穿刺ミス(穿刺を失敗してしまうこと)であることがわかりました。穿刺ミスにより行った針先の調整などは痛みの増強に繋がりますし、血管損傷におけるリーク(血管から血液が血管外に漏れてしまうこと)はシャントをダメにしてしまう原因にもなってしまいます。ですから私たちは穿刺時の痛みを和らげること、穿刺ミスをなくすことが患者様のストレスをなくし、優しい透析治療に繋がっていくと考えています。
△直近4年間の穿刺時の痛みと穿刺ミスの割合グラフ

<実際行っていること>
穿刺の痛みに対しては、

  1. 穿刺ごとにフェイルスケールを使用し毎回穿刺時の痛みを患者様から聞いて評価((0(痛みがない)~10(耐えられないほど痛い))の10段階評価)通常の痛みの基準値を患者ごとに設定し、その基準値以上の場合は「痛みがある」とし改善策をスタッフ個人で考察し、改善に繋げています。
  2. シャントマップによる情報共有(番号を付けて、痛みのある箇所や穿刺容易・困難箇所の情報共有)
  3. 適切な局所麻酔テープの選択
  4. 皮膚冷却装置の使用 を行っています。

穿刺ミスに対しては、

  1. スタッフの穿刺技術の向上(シャントマップによる血管走行の確認・穿刺部位の特定、超音波エコー検査による血管の内腔の状態確認・深さの確認、穿刺の見学)
  2. エコー下穿刺
  3. 3Dプリンターで作成したシャント血管模型の活用 を行い、改善策を検討し穿刺向上の取り組みを行っています。

△超音波エコー検査の報告書例

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