札樽病院ブログblog

2019.12.17 UP
第17回 ボトックス治療

※HPリニューアルにつき、過去に投稿した記事を再投稿しております。

脳血管障害などの神経の病気でしばしば体の動きが悪くなります。
これを運動麻痺といいます。
この麻痺が出た後は、数か月後にはその麻痺の部分の筋肉が病的に持続的に収縮し続けるようになります。
体の外から触るとその部分の筋肉が固くなっているのが分かります。
この現象を「痙縮」と呼びます。
痙縮が現れると、四肢・体幹では、もともと麻痺のために自力で動かしづらい部位が、外力でも動かしづらくなります。
そうなると健常な体の部分の動きの邪魔になり、歩行などの運動が行いにくくなり、また介護の面でも移動動作や体の清潔を保つことなどの支障となります。

1. ボトックス(ボツリヌ菌毒素)」で筋肉の異常なこわばりをとる
 そこで、病的に収縮している筋肉を緩めるために使われるのがボツリヌス菌毒素です。
ボツリヌス菌毒素は、筋肉を麻痺させる(筋肉が動きにくくなる)強力な成分です。
食品内でボツリヌス菌が増殖すると、これを食べた人の体内にその菌が作る毒素が入り、全身の筋肉を麻痺させます。
手足の筋肉だけでなく、呼吸筋同様に麻痺させますので死につながります。
ボツリヌス菌は飯寿司などによる食中毒で死亡事故を出す原因の重要な一つです。
それほど強い成分であるボツリヌス菌毒が精製されて、筋肉の「痙縮」を除くための医薬として使われ、「ボトックス」の商品名で注射液として発売されています。

2.  ボトックス(ボツリヌ菌毒素)治療の実際
ボトックス(ボツリヌ菌毒素)」注射は、「痙縮」のために固まってしまった筋肉をほぐすので、リハビリの際に体をスムーズに動かすことができて訓練効果を高めます
体が固くなったために清潔を保つのが難しくなった場合にも固まった部分を緩めるのに有用です。
そのほか、現在、保険診療ではの痙攣、手足の麻痺、の痙攣、更に、多汗症の一部などの治療のために使われます。
保険適応外では顔の筋肉の異常な収縮を除くため、しわ取りとして美容整形分野で使われています。

3.  ボトックス(ボツリヌ菌毒素)治療への誤解
 前記のように、リハビリの面では、ボトックスを併用することによって効果が上がることがありますが、それは、ボトックスによって痙縮が軽減してリハビリ効果が上がったため麻痺が軽くなったり、歩行が改善したりすることを示します。
これはあくまでリハビリ効果があったもので、ボトックスが筋肉の力をつける訳でも、麻痺を改善させるわけでもありません。
ボトックスはあくまでも、筋肉を軽く麻痺させることによって固まった筋肉をほぐしてリハビリをしやすくするということなのです。
言ってみれば、ボトックスの役割は、「諸刃の剣」、ないし「毒を以て毒を制す」に相当します。

以上、ボトックスは危険な面ももっていますが、正しく使うととても有用です。神経やリハビリの専門医とよく相談しながら利用するとよいでしょう。

 

次回、第18回は「高次脳機能障害」です。